数学Ⅱの多項式の除法による余りを求める問題です。
考え方
この問題で求めるものは3次式で割ったときの余りです。
このポイントにより,3次式で割ったときの余りの次数は2以下となります。つまり,余りは2次式,1次式,定数のいずれかということです。これより $P(x)$ を $(x-1)^2(x+2)$ で割ったときの商を $Q(x)$ とすると,
P(x)=(x-1)^2(x+2)Q(x)+ax^2+bx+c
\end{align*}
ここで,未知数は $a,b,c$ の3文字だから,これらを決定するためには3本の方程式を立てなければなりません。しかし,問題文には,2つの条件しかありません。
- $P(x)$ を $(x-1)^2$ で割ると余りが $4x-5$
- $P(x)$ を $x+2$ で割ると余りが $-4$
2番目の条件からは,剰余の定理を利用することで,$P(-2)=-4$ となります。これで1つの方程式を立てることができます。
最初の条件について,$P(x)$ を $(x-1)^2$ で割ったときの商を $Q_1(x)$ とすると,
P(x)=(x-1)^2Q_1(x)+4x-5
\end{align*}
易しい問題では,割る式が $(x-1)(x-2)$ のように異なる2つの $x$ の値に対して0になる式になっています。しかし,今回のように2乗になっていると,1つの $x$ の値しか代入することができません。そのため,方程式が1つしか得られないと思ってしまうんですね。
なんとかして2本の方程式を立てなければなりません。そこにこの問題の難しさがあります。
この処理の仕方には,2通りの方法があります。その両方の解法を紹介しておきます。
解答
$P(x)$ を $(x-1)^2(x+2)$ で割ったときの商を $Q(x)$ とすると,
P(x)=(x-1)^2(x+2)Q(x)+ax^2+bx+c~\cdots\cdots ①
\end{align*}
$P(x)$ を $(x-1)^2$ で割ったときの商を $Q_1(x)$ とすると,
P(x)=(x-1)^2Q_1(x)+4x-5~\cdots\cdots ②
\end{align*}
P(1)=-1
\end{align*}
a+b+c=-1~\cdots\cdots ③
\end{align*}
4a-2b+c=-4~\cdots\cdots ④
\end{align*}
ax^2+bx+c=a(x-1)^2+(2a+b)x-a+c
\end{align*}
P(x)&=(x-1)^2(x+2)Q(x)+a(x-1)^2+(2a+b)x-a+c \\
&=(x-1)^2\{(x+2)Q(x)+a\}+(2a+b)x-a+c
\end{align*}
\begin{cases}
2a+b=4 & \cdots\cdots ⑤ \\
-a+c=-5 & \cdots\cdots ⑥
\end{cases}
\end{align*}
よって,求める余りは $x^2+2x-4$
別解
④までは同じです。
①の両辺を $x$ で微分すると
P'(x)=2(x-1)(x+1)Q(x)+(x-1)^2\{Q(x)+(x+2)Q'(x)\}+2ax+b
\end{align*}
②の両辺を $x$ で微分すると
P'(x)=2(x-1)Q_1(x)+(x-1)^2{Q_1}'(x)+4
\end{align*}
よって,$2a+b=4$
これで⑤を出すことができたのであとは同じです。
まとめ
今回の問題のように2乗の式で割っている場合,次の2通りの処理の仕方があることを覚えておきましょう。
- 余りをさらに割る。
- 微分する。