―伸び方を変える“先生への質問の仕方”と家庭の支え方(現役予備校講師が現場で感じていること)
はじめに
最初に、はっきり書きます。
この記事は「親が勉強を教える方法」ではありません。高校生〜浪人生の受験では、親が解き方を教えようとすると、
- お子さんが反発する
- 親子関係が荒れる
- 勉強そのものが止まる
という形で、逆効果になりやすいからです。
親が数学を解ける必要はありません。この記事で扱うのは「解き方」ではなく、「先生に相談できる状態を作る方法」です。
ただし、医学部受験では「先生にうまく質問できるか」で伸び方が変わります。保護者が本当に役に立てるのは、「内容の指導」ではなく、「質問の質を上げるための支え」です。
この記事で伝えたい結論
家庭でできる支援は、主にこの2つです。
1つ目は、受験生が先生に質問するときに、「どこで止まったか」を説明できる状態にしておくこと。これだけで授業の吸収率が上がり、伸び方が変わります。
2つ目は、家庭で余計な摩擦を増やさず、集中が続く環境を保つこと。
受験は長丁場なので、学力以前に「勉強が続くかどうか」を左右します。
なぜ「質問の質」で伸び方が変わるのか
医学部受験で伸びない子の多くは、質問が次のようになりがちです。
- 「分かりません」
- 「どっちが正解ですか」
- 「結局これ覚えればいいですか」
これだと、先生側は状況が分からず、結局“答え”を渡す形になりやすい。
一方で伸びる子の質問は、こうです。
- どこまでやったか
- どこで止まったか
- 何を試したか
この情報が揃うと、先生は「どこが弱点か」をピンポイントで直せます。
先生への質問テンプレ(これだけでOK)
保護者がお子さんに渡せるのは、これだけで十分です。数学の内容が分からなくても使えます。
- ここまでやった(この式/この図まで)
- ここで止まった(理由:変形できない/方針が見えない/計算が崩れる など)
- 試したこと(解き方の選択肢を少し試したが、ここで詰まった)
※「解き方の選択肢」とは「まず何から手をつけるか」という最初の方向性のことです(例:図を書いて状況整理から入る)。
家庭でできる“いちばん現実的な支援”=質問メモづくり
ここがポイントです。
お子さんからすると、親に
「答えを求めるためにはどんな方法があるか書き出してみた?」
「とりあえず手を動かしてみて」
と言われると、「解けないくせに偉そう」と感じやすい。
だから家庭では、要求ではなく「支援の申し出」にします。
偉そうにならない声かけ例
- 「数学の中身は分からないけど、先生に聞くときの質問メモなら手伝えるよ」
- 「先生に聞く前に、“どこで止まったか”だけメモしておく?」
- 「必要なときには声をかけて」
この言い方なら、干渉ではなく支援として届きやすいです。
お子さんが質問メモを作れないとき(親ができる最小の手助け)
質問メモが書けない子は、だいたい
- どこで止まったか言語化できない
- “何を質問すれば良いか”が自分で整理できていない
という状態です。
このとき家庭でできるのは、内容の指導ではなく、“止まっている場所を特定する手伝い”だけで十分です。
使える問いかけ(親が数学できなくてもOK)
ポイントは、質問を広げずに狭めることです。
- 「止まってるのはどれ?①問題文 ②式作り ③式変形 ④計算 ⑤図・条件整理」
- 「分からないじゃなくて、次に何をしたいのにできない?」
- 「先生には、どれを見せると早い?(ここまでの式/書いた図/途中計算)」
ここまで整理できれば、質問の質は十分上がります。
家庭で避けたいこと(よくある逆効果)
- その場で解法を教えようとする
- 解説動画を次々見せる
- 「なんで出来ないの?」と詰める
- 勉強中に頻繁に声をかける
家庭が“戦場”になると、受験は長く持ちません。
家庭でできる支援は「勉強を教える」以外にもある
もう1つ、効果が大きいのが 受験生の集中を切らないこと です。医学部受験は長丁場で、家の空気が荒れると勉強の継続が一気に難しくなります。
ここで言う「イライラさせない」は、気を遣ってご機嫌を取るという意味ではありません。余計な摩擦を増やさない運用をする、という意味です。
摩擦を増やしやすい声かけ(悪気がなくても逆効果になりやすい)
- 「今日どれだけやったの?」
- 「そのままで大丈夫なの?」
- 「なんでできないの?」
- 「早く寝た方がいいんじゃない?」
これらは内容として正しくても、受験生側には「監視」「詰問」に聞こえやすいです。
摩擦を減らす言い方(同じ内容でも伝わり方が変わる)
- 「今、話しかけて大丈夫?あとでにする?」
- 「必要な時だけ言って。手伝えることある?」
- 「困ったら呼んで」
ポイントは、評価しない/ジャッジしないこと。家庭は「成績を上げる場」ではなく、受験生が回復してまた机に戻れる場にするのが強いです。
具体的に“家庭がやると効くこと”
- 勉強中は声をかけない(連絡はメモかLINEで)
- 話すのは「休憩中」だけにする(時間を決める)
- 生活面(食事・洗濯・買い物)を安定運用する
- 不安の吐き出しは受験生ではなく大人側で処理する(夫婦・友人・講師に相談)
結果として、受験生は「勉強に戻るまでが早くなる」ので、積み上げが変わります。
まとめ
医学部受験で、保護者が一番役に立てるのは「勉強を教えること」ではありません。
家庭で効くのは、主にこの2つです。
- 先生に質問するときに、受験生が 「どこで止まったか」 を説明できる状態にしておく(質問の質を上げる)
- 家庭で余計な摩擦を増やさず、集中が続く環境を保つ
具体的には、
- 先生への質問テンプレを用意する
- 質問メモづくりを“支援として”手伝う(命令ではなく申し出)
- 評価・詰問の声かけを避け、必要なときだけ手を貸す
これだけで、伸び方が変わる家庭は多いです。
もし「質問メモは作れているのに、先生にうまく伝わらない」「聞いても同じ所で止まる」状態が続く場合は、質問の内容ではなく、手前の理解(問題文の読み取り・条件整理・式変形・計算)で詰まっている可能性があります。その場合は、遠回りせずに 講師側に“どこで止まっているか”をまとめて見せるのが最短です。
